台湾旅行③

3月15日 PM

 

部屋に戻って用意をし、ロビーに降りる。今日のツアーは十份、九份を車で巡るプライベートツアー。ガイドさんが車でホテルまで送迎してくれる。外は長袖1枚でちょうどよかったが、念の為インナーダウンとレインジャケットを持っていく。そわそわと待っていると、40代くらいのおじさんが来た。名前は黄さん。日本語は少々癖があるものの、かなり上手。トヨタ車(車種忘れた)に乗り込み、台北から高速に乗って十份瀑布という滝に向かう。十份までは1時間ほど。しゃべりが好きでない夫に変わって助手席に乗ろうかと考えるがなんとなく後ろに座った。途中で新平市というところを通り過ぎる。黄さんの自宅があるらしい。「私の家、あのへん、サヨナラ~」と言う。新平市はベッドタウンみたいなところで、ここから台北に通勤する人が多いとのこと。黄さんは日本が好きで年に1回は行くらしい。今度は東北に行きたい。北海道の温泉、よかった。大阪も行った。そんな感じのことを話しつつ到着。空を見上げるとランタンがふわふわ飛んでいるのが見える。

車を降りて滝に向かう。途中の売店で、黄さんが果物を指差し、これはグァバ、これはパイナップル、と教えてくれる。どれが食べたいかと訊かれ、食べたことないグァバと答えると黄さんが一つ買ってくれた。一緒に袋に入った謎の粉末もくれた。夫になにそれ?ときかれ、入浴剤じゃないかと答える。途中で黄さんが立ち止まり、ここからこういう道でここにトイレがあって、など説明したあと、15時40分にここに戻ってきてください、と言う。黄さんは滝まで来ないらしい。夫と息子と3人で滝へ向かう。途中、不思議な像、ありがたそうな感じの像、昔公園によくあった4人乗りのブランコ、売店などがあり、しばらく歩くと滝に到着した。あんまり激しくない、高さより横幅に迫力がある感じの滝。私は滝系ってあまり興味ないのだけど、息子はじっと見ていた。滝の前のベンチでさっき買ってもらったグァバを食べる。柑橘類みたいなジューシーな感じかと思ってたら、梨系の果物だった。シャキシャキしていて、汁気は少なく、味は淡白。息子はあまり気に入らない様子。夫とがんばって食べる。食べ終わって気付いたが、さっきもらった粉はグァバにかけるものだったらしい。どうして入浴剤だと思ったんだろうか。

 

車に戻り、次は十份へ。(滝も十份だけど)線路からランタンをとばすので有名な観光地。駐車場には野良犬なのか、大きめの犬がうろうろしていた。

黄さんについて5分ほど歩くと、線路とその両脇に土産屋がたくさん並んでいる場所についた。みんな線路に入り、ランタンをぽこぽこあげている。だいたい30秒に1回くらいの頻度でランタンがあがる。黄さんに「ここの線路は廃線なんですか?」ときくと、「廃線じゃない、電車通ります」と言う。わりとすぐに電車が来た。スピードはゆっくりで、近づくと誰かが「線路から出ろ~!」とわあわあ騒ぎ立て、みんな狭い両脇の道にぎゅうぎゅうになって電車が通り過ぎるのを待つ。轟音をたてて電車が通り過ぎるとまた線路に出てランタンをあげる。

黄さんが土産屋のひとつに入り、ランタンをどれにするか訊かれる。ランタンは4面あって、全部同じ色の1色、全部違う色の4色、さらに1面を2分割した8色がある。色が多い方が値段は高く、色にはそれぞれ意味がある、とのこと。150元の4色のにする。

台に吊るして筆で願い事を書く。「息子がすくすく育ちますように」「仕事で最高の結果を残せますように」「みんな元気で楽しく」「美好未来 萬事如意」とそれぞれ書く。最後のは書くことがなかったのでテンプレに書いてあった言葉を書いた。素晴らしい未来、全て自分の思う通りになる、みたいな意味らしい。線路に出て、ランタンのはしっこを夫と私で持つとお店の人が中に点火してくれる。思ったより熱を感じて腰がひけてしまう。3、2、1で手を放すとランタンはふわーっと浮かんでいった。あっという間に点になって、他のランタンと見分けがつかなくなる。終始を黄さんがデジカメのムービーにおさめてくれていた。見上げていると、わりとすぐに燃えて落っこちてるランタンもあった。がんばって遠くまで行ってほしい。

おもしろかった~!と興奮しつつ店に戻ると、お店の人と黄さんがちいさいランタンのストラップを指し、振るとピカピカ光る、子どもにどうかと勧めてくる。なんとなく断れず、息子にひとつ選ばせて買う。200元。ランタンより高い。

近くの売店を見てまわっていると黄さんが台湾の名物の花生捲冰淇淋というスイーツを買ってくれた。クレープにアイスとピーナツの粉をのせて巻いたもの。パクチーをいれるとおいしいらしいがこの日はパクチーは売り切れだった。なかなかいける。息子は口のまわりをべたべたにしながらすごい勢いで食べていた。

 

次は九份に向かう。千と千尋の神隠しのモデルになったと言われてるけど実際は違う、という有名な観光地。十份から30分くらいで着く。着いたときには日は落ちていて、空の端っこが少し明るいくらい。黄さんがおすすめの店、トイレの場所などがかかれた地図を渡してくれる。2時間後の19時にまたここでと言って解散する。九份は坂道と階段の多い商店街という雰囲気。お土産屋さんと食べ物屋さんがずっと続いている。息子、だいぶくたくたで歩かないので夫と交代でだっこして進む。基本的に人がめちゃくちゃ多いのでじわじわ進むという感じだが、途中で列がまったく動かなくなる。前方でなにが起こってるのかもわからず、息子を抱っこしたままぎゅうぎゅうの状態でストップ。しばらくするともみくちゃの中からオートバイが出現した。マジで意味が不明だ・・・。腕が死んだ。オートバイが通り去ると列も進み出す。急な階段を登り、黄さんおすすめの芋団子ぜんざいの店へ。おっちゃんは日本人に慣れており、日本語で「あついの?つめたいの?」ときく。肌寒いので「あついの」と答えると、「つめたいほうがおいしいよ!」と言われるがあついのを頼む。店の奥の路地を進むと薄暗いフードコートのような空間が。一応夜景も見える。そこでぜんざいを食べる。冷たいのは黄色やピンクの芋団子がインスタ映えするかわいらしいスイーツだが、あついのはぱっと見た感じただの泥水。正直まずそうと思ったが、沈んだいも団子を食べるとモキュモキュしてなかなかおいしかった。

もう少しお腹を満たしたくなり、食堂っぽいところに入る。油かけごはん(ごはんに油かけただけ)、醤油かけごはん(ごはんに醤油かけただけ)みたいな、これで金とれるんだ・・・というメニューがあっておもしろい。魯肉飯、油かけ麺を頼む。息子、謎の食い意地を発揮しルーローハンを独り占めしようとする。油かけ麺はそうめんみたいなのに油がかかっただけのもの。ラードなのか、コクがあっておいしかった。隣では店員らしい若者がスマホをいじりながら賄いを食べていた。

2時間なんて持て余すかと思いきや、混んでて思うように進めないので食べ終わると残り時間30分。ここから写真の人気スポット(急な階段に提灯がいっぱいぶら下がってる)を抜け、黄さんのところまで戻らねばならない。早足で人混みをすり抜け、一応写真も撮って時間ぎりぎりに到着。途中、高台から海を臨む夜景が美しかった。

 

ここからまた台北市に戻り、士林夜市に寄ってからホテルに戻る。息子はすでにかなりクタクタ。夫も九份では息子を抱っこしていた時間がながいので疲れている。二人を後部座席で休ませて、私は助手席に座る。私もたいがい疲れていたが、黙っているのもなんなので謎のサービス精神を発揮し、黄さんに色々話しかける。黄さんが「カナさんと、ハニムーンで北海道に行きました」と言うので、奥さんの名前がカナさんなのか?と思ったら「カナさん・・・うーん、my wife」と言うので、ああ家内のことか、随分古風な言葉を知っているんだな、と思った。

話題も尽きた頃、台北市に入った。夜景が華やかで、新婚旅行で行ったパリのことをなんとなく思い出した。あのときも、街の夜景がきれいで、ずっと眺めていたいと思った。遠くに中国風のでっかい建物がポツンと建っているのが見える。予約のときに迷ったグランドホテル台北だ。市街地とはちょっと離れたところにあるんだな。

 

高速道路を降りて士林市場に到着。黄さんが市場の名物を教えてくれる。昼にも食べたアイスのクレープ巻き、排骨(スペアリブみたいなやつ)。市場の前の交差点で車が止まる。普通に横断歩道の真ん前だけど大丈夫なのか?あわあわと荷物をまとめて降りる。45分後にまたここに来てくださいとのこと。市場に入る前に振り向くと、黄さんの車はまだ横断歩道の前に停車している。特に慌てて降りる必要はなかったらしい。

さて夜市。昼に行った臨江街とは規模も雰囲気もかなり違う。こっちはかなりお祭感がある。店というより屋台が多く、食べ物もかなりジャンキーな雰囲気。値段も張る。遊技場のようなエリアもある。黄さんが言うには、とにかく広い、このエリアはほんの一角なのであまり遠くに行きすぎないように、とのこと。何か食べたいが、とにかくジャンキーで巨大なものが多くちょっと尻込みしてしまう。気になったのがエリンギを焼いたものを売ってる屋台。あとは屋台街からは外れていて、店構えもちょっと古くさいけどやたら人が並んでいた饅頭の店。もちろん臭豆腐の店もあった。串にささっていて、なんとなくカジュアルの雰囲気。匂いも初日に見た店よりマイルドな気がしたが、慣れか・・・? ウロウロするばかりで時間が過ぎていくのでとりあえず何か買うことに。夫は猪肉の串焼き、私は鶏皮にご飯を詰めて焼いたものとサトウキビジュースを買った。屋台のお兄ちゃんに「いくら?」と訊くと「?」という顔をされる。夫が横から「How much?」と訊いてくれる。サトウキビジュースは砂糖水のようなひたすらに甘い味がした。

 

時間が来たのでもとの交差点に戻る。横断歩道の前にまだ黄さんの車が停まっているが、なんやら警察っぽい人と話している。やっぱりあそこに停めっぱなしは怒られるだろう・・・と思いつつ車から少し離れたところで待っていると、話し合いの終わった黄さんは車を発進させてどこかへ行ってしまった。夫と2人で戸惑いつつ「ま、すぐ戻ってくるやろ」と待っているが10分たっても戻ってこない。黄さんの名刺に書いてあるケータイ番号、ラインに連絡をしても返答なし。ここ、ホテルからまあまあ遠いのだがどうすれば・・・?車に荷物ものせてるし・・・と焦りだした頃、黄さんの車が戻ってきた。「ケーサツに注意されてしまったのでちょっと移動してマシタ」。うん見てたよ。なんだか黄さんかなり顔が疲れている。お子さんもいらっしゃるのに、こんな遅い時間までたいへんな仕事だなあ。少し時間が押してしまったがホテルへ戻る。22時15分、ホテルに到着。黄さんにお礼を言って解散。1階のラウンジでは黒人の女の人が歌を歌っている。目が合うとにこっと笑ってくれる。ゆっくり聴きたかったがみんなクタクタなので、部屋に戻り、風呂に入ってすぐに寝る。とにかく濃い一日だった。